介護の仕事をしている人の多くが経験する夜勤。まだ実務経験が少ない人のなかには、夜勤での介護記録の正しい書き方に自信がないという人もいるでしょう。
そんな人のために、介護記録を書くときのコツについて具体例を交えながら解説します。
介護記録とは?
介護記録とは、施設の利用者の日々の様子や変化について施設スタッフや利用者の家族などと情報を共有するために残す記録のことです。
介護記録を書く目的
スタッフ間での情報共有
介護業務は施設によっては24時間体制でおこなわれており、利用者一人に対して複数名のスタッフが関わることになります。そのため、利用者の様子や利用者に対してどのような介護サービスをおこなったかなどの情報共有が重要となります。
課題の洗い出し
介護記録を書くことで、利用者一人ひとりの介護業務のプロセスが見えてきます。プロセス全体を把握できると以下のようなこともわかります。
- 利用者の抱えている問題はどういったものか
- 問題解決のために何が必要か
- 業務内容に非効率な業務はないか
このように、利用者ごとの課題の見える化をおこなうことで、問題解決への道筋が見えやすくなります。
ご家族への報告
介護記録は利用者のご家族への報告ツールとしても重要な意味を持ちます。ご家族と離れて暮らしているからこそ、利用者の普段の生活の様子は気になるものです。
- 他の利用者と仲良くやっているか
- 毎日元気に過ごしているか
- どのような介護サービスを受けているのか
など、ご家族の疑問や不安を解消する情報源としても介護記録は大きな役割を担っています。
万が一の時の証明
スタッフ間の情報共有には口頭での申し送りもありますが、場合によっては「言った」「言わない」の論争になることもあります。しかし介護記録で文字として情報を残せばその情報を客観的に見ることができ、万が一トラブルが発生した時の証明にもなります。
介護記録の書き方
「5W1H」を意識して書く
介護記録では、誰が読んでも正しく理解できる文章が求められます。そのためには「5W1H」を意識して書くようにしましょう。「5W1H」とは、When(いつ)、Where(どこで)、 Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)を示す言葉です。これらを意識した文章を書くことで、読み手にも介護現場の状況を明確に過不足なく伝えることができます。
曖昧な表現を避け事実のみを書く
たとえば、利用者のAさんという方について介護記録の中で次のように書いたとします。
「Aさんはいつもよりトイレに行かれる回数が多かった」
この文章は、Aさんが普段の夜中にトイレに行く頻度を知らない人にとっては、曖昧な文章と言えます。誰が読んでもわかるように書くためには、次のように具体的な数字を使って書くとよいでしょう。
「普段のAさんは夜中のトイレはほぼ一回だが、昨晩は3回もトイレに行かれた」
このように普段と比較して書くことで、Aさんの体調に対する注意喚起を他のスタッフに促すこともできます。
「だ、である調」で書く
介護記録を書く際には「だ、である調」で書きましょう。「です、ます調」は読み手に柔らかい印象を与え、親しみのある文章になるのに対し、「だ、である調」は読み手にかしこまった印象を与え、説得力のある文章になります。
項目ごとに整理して書く
食事、服薬、トイレ、レクリエーション、睡眠といったように、日常生活で欠かせない項目ごとに書くと、読み手も情報を整理しながら読むことができます。
夜勤時の介護記録例
「介護記録の書き方」で見てきたポイントをもとに、項目ごとの介護記録の例をご紹介します。
夕食・朝食
食事では、利用者が主食と副食のそれぞれについて何割ほどを食べたかを記録する必要があります。食べた量を知ることはその日の体調の変化に気づくきっかけとなります。
(具体例)
今朝は主食と副食を完食される。普段から残されることは滅多にないが「残さずに全部食べられましたね」と話しかけると「今日は、レリクリレーションで散歩に行くからしっかり食べておかないとね」と笑顔でおっしゃる。
服薬
処方薬の服用を拒まれたり、なかなか服用してくれない場合、あるいは頓服を服用された場合にはその旨を書きましょう。
(具体例)
朝食後に薬を服用されるが、一時間ほどして「薬を飲むのを忘れた」とおっしゃる。薬を飲んだことを忘れられた時は「お薬カレンダー」を見せて服用したことを確認している。今回もカレンダーを見せながら「今朝のお薬はちゃんと飲まれましたよ。次は夕食後にお薬を飲みましょうね」と伝えると「飲んだことを忘れていた。ありがとう」と笑顔でおっしゃる。
トイレ
トイレ内の様子だけでなく、体調のバロメーターとなる尿や便についても書きましょう。便の量については「多い」「少ない」だけでは曖昧です。「お碗一杯」「バナナ1本」「手のひら」「親指程度」など、具体的な表現で統一している施設もあります。
(具体例)
8時半頃にトイレで排便をされる。トイレ内ではご自分でスムーズに立ち座りされている。便の形はバナナ状、色は黄土色〜茶色、硬さは歯磨きペースト状、量はお碗一杯、においは便臭がするが強烈な悪臭ではない。
帰宅願望
帰宅願望については、利用者がどのような心境なのかが客観的にわかるように記録しましょう。利用者とスタッフとの実際のやりとりを書くことでその状況がリアルに再現でき、他のスタッフが対応する時の参考となります。
(具体例)
朝食後に施設の玄関前を通ると、靴箱の方を向いて「家に帰りたい」とおっしゃる。「どうして帰りたいんですか?」と尋ねると「孫に会いたい」との返答。それに対して「お孫さんは次の日曜日に来られますよ。それに今日は、楽しみにされていたカラオケのレクリエーションの日ですよ」とお伝えすると「そうだったね。ごめんね」とおっしゃって自室へ戻られる。
就寝
利用者が深夜の見回りの際にも目を開けている場合、それが原因で睡眠不足を引き起こし、生活リズムを乱す恐れがあります。そのため、介護記録にもそのことを記録する必要があります。
(具体例)
0時の見回りの際にベッドを覗くと、目を開けていらっしゃる。「眠れないのですか?」と聞くと「まだ一睡もできていない」とおっしゃる。3時の見回りでは、寝息をたてて寝ておられるのを確認。翌朝はいつもと同じように6時に起床される。「あれから眠れましたか?」と聞くと「あんたが0時の見回りに来たあとにようやく眠れたよ。ありがとう」と笑顔でおっしゃる。
夜間の徘徊
夜間の徘徊は昼間の活動にも悪影響を及ぼす可能性があります。徘徊には一定のパターンが見られることが多いので、それをしっかりと記録し対策をすることで解決の糸口につながることもあります。
(具体例)
22時に見回りに行くとお部屋にいらっしゃらないので部屋の周りを捜索する。食堂の前を歩いていらっしゃるので「どうされたのですか?」と聞くと「トイレに行こうとしていた」とおっしゃる。そのままトイレへと誘導。失禁はされていない。徘徊はおよそ20分間で、それ以降は徘徊なし。
転倒
利用者の転倒は、スタッフがその瞬間を見ているケースとスタッフの目の届かない所で転倒されるケースがあります。後者の場合は、状況の見極めやその時の会話、スタッフの対応、外傷の有無などについて詳細に記録し、再発防止につなげましょう。
(具体例)
20時40分頃に呼び出しのベルが鳴る。お部屋にうかがうとベッドの横で四つん這いになっていらっしゃる。スリッパを脱ぐ際にうまく脱げずに滑ってしまい、尻もちをついたとのこと。「お尻が痛い」とおっしゃるので確認するも外傷やあざは見られない。手を取り廊下を歩いてもらうとスムーズに歩行ができる。念のため看護師にも連絡。今後、痛みが続くかどうか様子を見る必要がある。
起床
一日のはじまりである起床時は、利用者が昨晩よく眠れたかどうかを確かめる大事な時間です。起床時の利用者の様子を共有し、気持ちよく一日をスタートできるようサポートしましょう。
(具体例)
起床時に「よく眠れましたか?」と聞くと「ぐっすり眠れたよ」と笑顔でおっしゃる。その後、ベッドの上でパジャマから普段着に着替えるのを手伝う。その後、洗顔をご自分でされる。
給与
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パート・アルバイト 日給 24,000円~24,000円 |
---|---|
勤務時間
|
21:00~翌9:00 |
仕事内容
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府中市にある男性のご利用者様のお宅に訪問して身体介護、生活援助をお願いいたします。 (勤務時間:月曜日の21:00~火曜日の9:00) ※別室で仮眠もできます。 |
住所
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東京都 町田市 小山町2598-5 メゾンファミーユⅤ101 京王相模原線 多摩境駅 から徒歩6分 |
夜勤時に介護記録を書く時の注意点
「これまで夜勤時の介護記録はなんとなく書いてきてしまった」という方も多いのではないかと思いますが、書く際にはいくつか注意すべきポイントがあります。その主な4つのポイントをご紹介します。
屈辱表現は使わない
介護記録では利用者の尊厳を傷つけるような屈辱表現を使用してはいけません。具体例としては「ボケているAさんは」「自分勝手な行動がみられる」「口を開けば文句ばかり言う」などの表現が挙げられます。
スタッフ間の情報共有ツールとしてだけでなく、利用者のご家族などの外部の人も目にすることがありますので、読んだ人の気分を害する主観的な表現は避けましょう。
- 「ボケているAさんは」→「認知症のAさんは」
- 「自分勝手な行動がみられる」→「こちらの話を聞く前に行動される傾向がある」
- 「口を開けば文句ばかり言う」→「いつも改善点をご教授いただける」
このように柔らかい表現で書くと、読み手の気分を害することを避けられます。もちろん、介護する側も人間である以上、時にはイラッとすることもあるでしょう。しかし、そんな時でも介護記録に負の感情をぶつけて書くことは避けるべきです。
命令を連想させる言葉は使わない
介護をする側とされる側は互いに対等な立場でなければいけません。そのことを介護記録を書く際にも意識しましょう。
悪い例としては「○○するように促した」「△△をするなと注意した」などが挙げられます。このような書き方をすると「介護スタッフと利用者の間に上下関係が成り立っているのでは」という印象を与えかねません。また、これを読んだ利用者のご家族の方は、大切な家族を施設に預けることに不安を覚えるかもしれません。
- 「○○するように促した」→『「○○してはいかがですか」とお声かけした』
- 「△△をするなと注意した」→『「△△すると危ないですよ」とその行為をやめていただいた』
これらの表現のほうが柔らかい印象を与えます。
根拠のない医学的用語は使わない
利用者が「頭が痛い」とおっしゃった場合、単に「頭痛を訴えておられる」という記述であれば、利用者の主観表現であるため問題ありません。
一方で「頭痛を訴えておられる。脳梗塞の恐れあり」といったような実際の病名を用いた記述をしてはいけません。「脳梗塞」であるかどうかは専門知識を持った医師が判断することだからです。
専門用語はできるだけかみ砕いて書く
普段の業務で何気なく使っている言葉の中には、外部の人にとっては馴染みのない言葉もあります。
たとえば、介護記録のなかで「PT、OTへ要連絡」「ADLの低下を防ぐためのケアプランが必要」と書かれていても、外部の人にとっては「PT、OT、ADLって何?」となってしまいます。専門用語はわかりやすい日本語にして記述するようにしましょう。
- 「PT、OTへ要連絡」→「理学療法士、作業療法士へ要連絡」
- 「ADLの低下を防ぐためのケアプランが必要」→「ご自身で日常生活の身の回りの動作ができるためのケアプランが必要」
このようにかみ砕いた表現をすることで、誰が読んでも介護記録の情報が理解できます。
夜勤時に介護記録を書く時のコツ
介護記録を書き慣れていない、他の業務で時間が十分に取れないなどの理由でうまく記録を残せない時もあるでしょう。そのような悩みを解決するためには以下のようなコツを押さえておきましょう。
テンプレートを作っておく
各場面に対応したテンプレート(雛形)を作っておき、それに落とし込むと、記録の作業がスムーズになります。ただし、何でもテンプレートに当てはめればよいというわけではありません。その時々の利用者の状況に応じて柔軟に対応しましょう。
夕食・朝食のテンプレート例
夕食や朝食のときのテンプレートとしては、以下のように利用者が食べた食事の量、食事中の様子、食事に要した時間などが挙げられます。
食事の量 | ・○○を△分目まで召し上がられ、□□は完食される
・「(声かけ内容)」とお声かけすると「(利用者の返答)」との返答がある |
食事の時の様子 | ・食事中は終始○○な様子で、時折△△である
・食事を終えられると「(利用者の発言)」とおっしゃる |
食事に要した時間 | ・□□分で食事を終えられ、テレビのある共有スペースへ移動される |
備考欄 |
トイレのテンプレート例
トイレでは、トイレに入ってからの様子、尿あるいは便の色、においなどについてテンプレートを作っておくと便利です。
トイレ内の様子 | ・立ち座りは○○な様子でされる
・便座に座って△△分で排泄を終えられる ・顔色は□□である |
尿の色、におい、泡立ち等 | ・尿の色は○色、においは△である、泡立ちは(なし、あり) |
便の形、色、におい等 | ・便の形は○○状、色は△色、においは□、硬さは▽である |
備考欄 |
起床のテンプレート例
起床時は、利用者をベッドから起こし、着替えや洗顔の介助、トイレへの誘導をするなど、一日のなかでも特に忙しい時間帯です。想定されるスケジュールに応じてテンプレートを作っておくとよいでしょう。
起床時の様子 | ・「(声かけ内容)」をお声かけすると○○な顔つきでいらっしゃる |
着替えの様子 | ・△△がご自分でできないので、その補助を行う
・□□分ほどで着替えが完了 |
洗顔の様子 | ・今朝はご自分で洗顔を(された、されなかった)ので、蒸しタオルでお顔を(拭く、拭かない) |
トイレへの誘導 | ・起きたばかりで○○な様子でトイレに移動されたので、「(声かけ内容)」とお声かけしたら「(利用者の返答)」との返答があった |
メモを取ることを習慣化する
以上のようなテンプレートに落とし込むためには、あらかじめ各場面でメモを取っておく必要があります。利用者の介助をするときには、利用者の介助を最優先にしつつ、常にメモをとる習慣をつけましょう。
夜勤の介護記録はシンプルにわかりやすくが基本
日勤のときよりも人員が少ない夜勤の時間帯では、介護記録はシンプルにわかりやすく書くことが求められます。
介護記録は必要情報を効率的にまとめよう
介護記録の主な目的は、担当した利用者の様子や対応内容を関係者と共有することです。誰が読んでもその時の状況がパッと浮かぶ内容であることが求められます。
そのためには、テンプレートなども有効に活用しながらその日ごとの利用者の身体の状況に合わせた介護記録を効率的にまとめる習慣をつけることが大切です。
介護のお仕事を始めて間もない人や、これから夜勤の介護のお仕事をされる人にとって、介護記録の正しい書き方を身につけることは実務に大いに役立ち、自信につながります。
また、これから介護のお仕事を始めたいと思っている人にとっても、介護記録の書き方を知っていることは就職するうえで大きな強みになります。
介護施設における重要な伝達ツールである介護記録を上手に活用することで、あなたの評価だけでなく、利用者やそのご家族の満足度も高めることができます。ぜひ効率的な介護記録の書き方を習得しましょう。
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