訪問介護はホームヘルパーとも呼ばれ、育児やプライベートと両立して働きやすい職種として人気を集めています。高齢化が進む日本において、これからますます需要が高まることが予測される介護職のひとつですが、具体的にどのような仕事をするのか、資格は必要なのかなど、疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで、訪問介護の仕事内容やできる仕事・できない仕事、1日のスケジュール例、必要な資格、給料相場などについて、ご紹介します。
目次
訪問介護とは?
訪問介護とは、要介護認定を受けている高齢者や障害支援区分の認定を受けている方の居宅を訪問して、身体介護や生活援助、精神面のサポートなどを行う介護スタッフのことを言います。
あらかじめ作成されたケアプランのもと、1日に複数の居宅へ訪問するのが一般的で、訪問先は大きく個人宅と介護施設の2つに分けられます。個人宅のみ訪問するケースや特定の施設のみ訪問するケース、両方訪問するケースなど、所属する事業所によって対応範囲はさまざまです。
基本的には利用者の方と1対1で介護や家事支援サービスの提供を行いますが、行政や医療・保健分野の職員とチームを組んで働くこともあり、関連職種への理解や連携、調整能力も求められます。
訪問介護の仕事内容
訪問介護の仕事内容は広範囲にわたります。訪問先によっても提供するサービス内容はさまざまですが、あらかじめケアマネージャーやサービス提供責任者が利用者本人やその家族と話し合って、介護・支援内容を決めているため、基本的にはそのケアプランに沿ってサービスを提供することになります。
訪問介護が利用者の居宅で行う仕事内容は、主に次の3つです。
仕事内容1. 身体介護
食事介助や排泄介助、入浴介助、身体の清拭、服薬介助、床ずれの予防、体位変換など、一般的な介護業務を行います。また実務者研修を修了し、喀痰吸引等研修(実地研修)を受けた訪問介護の場合は、喀痰吸引や経管栄養(胃ろう)などの医療的ケアを実施することもあります。
仕事内容2. 生活援助
利用者の方のADL(日常生活動作)の維持や向上を目的に、炊事や洗濯、掃除、買い物、布団干し、整理整頓、裁縫、生活に関するアドバイスなど、日常生活のサポートを行います。
これだけを見ると家事代行サービスと混同してしまいがちですが、訪問介護の役割は利用者の方ができないことの支援です。すべてを代行するのではなく、利用者の方が自分でできることは手を出さないのが基本の考え方となります。
仕事内容3. 通院介助
利用者の方が病院へ通っている場合は、通院介助を行います。病院までの移動方法は、公共交通機関や介護タクシー、徒歩などさまざまですが、安全に病院まで連れて行き、受診手続きや薬の受け取りのサポートなどを行うことが主な仕事内容となります。
訪問介護ができない仕事内容
訪問介護は、利用者の方に対してさまざまなサービスを提供しますが、「医療行為」や「日常生活のサポートの範疇を超える家事代行」は行うことができません。介護保険サービスの範囲に収まる内容でケアプランが作成されているため、あくまでもその内容に基づいて業務を行います。
それぞれ、具体的にどのような行為を指すのか、詳しく見ていきましょう。
できない仕事内容1. 医療行為
医療行為とは、摘便や注射、血糖値測定などのことで、医師の診断が必要な傷を消毒したり薬を塗ったりするなどの行為も訪問介護は行うことができません。
血圧に関しては、測定を行うだけであれば問題ありませんが、血圧の数値を確認して何らかの判断を下し、処置をしたり服薬を指示したりするようなこともNGです。これらを訪問介護が行った場合は、違法となります。
ただし、体温測定や小さな切り傷、やけどなどに対して、専門的な判断や技術を要さない処置をすることは、原則的に医療行為には該当しません。これらは医療行為ではなく医療的ケアと呼ばれ、湿布を貼る、目薬をさす、座薬を入れる、医師から処方された薬を飲ませる、などの行為も訪問介護が行っても問題ないとされています。
また先述の通り、喀痰吸引等研修(実地研修)を受けた訪問介護であれば、喀痰吸引や経管栄養(胃ろう)などを実施することも可能です。
できない仕事内容2. 日常生活のサポートの範疇を超える家事代行
まず大前提として、訪問介護が生活援助を行えるのは次の3つのケースに当てはまる場合のみです。これらのケースに当てはまらない場合、生活援助は行えません。
- 利用者の方が一人暮らし
- 利用者の家族などが障害や疾病を持っている
- 利用者の家族などに障害や疾病がない場合でも同様のやむを得ない事情で家事が困難
その上で、利用者が使用している居室以外の掃除をしたり、利用者の家族の食事を作ったりするなど、利用者の直接的な支援にならない行為は原則禁止されています。
また、大掃除や庭のお手入れ、日常生活に必要のない買い物の代行など、日常生活のサポートの範疇を超える行為も、訪問介護が行うべきことではないとされています。
訪問介護の1日のスケジュール例
訪問介護の仕事内容は、所属する事業所や訪問先によってさまざまですが、ここでは一例として1日に5件訪問する場合のスケジュール例をご紹介します。
- 08:30 出勤
事業所に出勤して、当日訪問する利用者情報の確認や準備などを行います。
- 08:50 Aさん宅訪問
朝食の食事介助や歯みがき、着替えなどのサポートを行って、デイサービスに送り出します。
- 10:30 Bさん宅訪問
昼食準備、洗濯物、部屋の掃除などを行います。
- 12:00 休憩
事業所に戻って、昼休憩をとります。
- 13:15 Cさん宅訪問
買い物代行、排泄介助、清拭を行います。
- 14:30 Dさん宅訪問
入浴介助、着替えなどのサポートを行います。
- 15:45 Eさん宅訪問
夕食の調理や食事介助、後片付けなどを行います。
- 17:00 帰社・退勤
事業所に戻って、報告書作成や引継ぎなどを行い帰宅します。
※一例でありタイムスケジュールはさまざまなパターンがあります
訪問介護になるのに必要な資格
訪問介護として働くには、原則として介護職員初任者研修以上の資格を持っておかなければなりません。訪問介護は基本的に1対1で介護を行うことになるため、専門的な介護スキルが必要とされ、無資格で働くことはできません。必要になる資格として、主に次の3つが挙げられます。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、訪問介護として働く上で必須の資格です。介護職の入門的な資格として位置づけられており、この資格を取得することで介護に関する基礎知識やスキルがあることを証明できます。
カリキュラムは全130時間で構成されており、以下の10科目を学びながら、介護に必要な基礎知識や技術を身につけます。この介護職員初任者研修の資格を取得して初めて、身体介護を行えるようになります。
- 職務の理解(6時間)
- 介護における尊厳の保持・自立支援(9時間)
- 介護の基本(6時間)
- 介護・福祉サービスの理解と医療の連携(9時間)
- 介護におけるコミュニケーション技術(6時間)
- 老化の理解(6時間)
- 認知症の理解(6時間)
- 障害の理解(3時間)
- こころとからだのしくみと生活支援(75時間)
- 講義の振り返り(4時間)
介護福祉士実務者研修
介護職員初任者研修の上位に位置づけられる資格で、より専門的かつ実践的な知識と技術を見につけます。国家資格である介護福祉士を目指すために必須の資格で、実務者研修を修了することでサービス提供責任者としても働くことができるようになります。また別途実地研修を受けることで、喀痰吸引などの医療的ケアも行うことが可能です。
なお、介護福祉士実務者研修には受講要件がないため、介護職員初任者研修を修了していない場合であっても受講できます。ただしその場合は受講時間が450時間となることに留意しましょう。介護職員初任者研修を修了している場合は130時間短縮されて、受講時間は320時間になります。
介護福祉士
介護福祉士は、介護資格のなかで唯一の国家資格です。受験するためには、介護福祉士実務者研修を取得しており、介護業界で3年以上の実務経験が求められます。
介護福祉士の資格を取得することで身体介護や生活援助といった基本的な業務のほか、利用者の家族に対してアドバイスや介護スタッフへの指導なども行えるようになります。そのため、サービス提供責任者やチームリーダーなど管理職の業務を任されるようになるのが一般的です。
訪問介護として働くために必須の資格ではありませんが、介護業界でキャリアアップを目指すなら、いずれは取得したい資格でしょう。
訪問介護が活躍できる場所
訪問介護が活躍できる場所は、個人宅のほか次のような施設がありおます。個人宅に訪問するイメージを持つ方が多くいますが、最近は活躍できる場所が増えているため、前提知識として押さえておきましょう。
住宅型有料老人ホーム
有料老人ホームには、大きく分けて住宅型有料老人ホームと介護付き老人ホームの2種類があり、住宅型有料老人ホームは施設のスタッフは常駐しているものの、介護を行う専任のスタッフは常駐していません。そのため多くの場合、ケアマネージャーによって作成されたケアプランに沿って、訪問介護サービスが利用されます。
介護サービス付き高齢者住宅(サ高住)
バリアフリーフロアや生活相談、安否確認サービスなど、高齢者の方が安心して暮らすことができる住環境を提供している賃貸住宅です。
訪問介護利用型とデイサービス併設型の2種類があり、訪問介護利用型の場合には訪問介護サービスが利用されることから、こちらも訪問介護が活躍できる場所といえます。
訪問介護になるメリットと大変なこと
どの仕事でも言えることですが、訪問介護の仕事にはメリットがある反面、大変なこともあります。これから訪問介護にチャレンジしようと考えている方は、両方を知った上で自分でもできそうか、改めて考えてみることをおすすめします。
訪問介護になるメリット
訪問介護は基本的に一人で業務を行うことになります。事業所に立ち寄ったりする時間はありますが、勤務時間の大半を利用者の方と1対1で過ごすことになるでしょう。そのため、職場の人間関係に悩まされにくいことがメリットです。
その分、利用者の方と良い関係を築く必要はありますが、訪問介護と利用者の方は立場が明確に違うため、同じ職場のスタッフに気を遣うような特有のストレスは感じにくいでしょう。1対1の介護と言っても、調理や洗濯、掃除をしている時間などは、基本的に一人で過ごすことになります。
また、登録や派遣で働く場合は、時間の融通が利きやすい点もメリットです。少ない訪問件数で、子供が学校に行っている間だけ働くといったことも可能になります。
介訪問介護として働く上で大変なこと
訪問介護は一人で業務を行えることがメリットではありますが、その一方で緊急事態も一人で対応しなければならない点は大変な部分だと言えるでしょう。利用者の方が急に具合が悪くなった場合など、不測の事態も責任を持って適切な対応を行う能力が求められます。
また、個人宅を複数訪問するようなケースでは、移動が大変になります。天気が悪い日であっても、定められたタイムスケジュール通りに複数件を訪問しなければなりません。毎回決まった施設で働く介護ヘルパーに比べて、移動の時間と労力が発生する点はデメリットと言えるでしょう。
訪問介護に向いている人
訪問介護は、要介護認定を受けている高齢者や障害支援区分の認定を受けている方のサポートをするお仕事です。食事に時間がかかったり、何度も同じことを聞かれたりといったことはよくあります。そのような時でも、相手のペースに合わせてそっと寄り添える方が訪問介護に向いていると言えるでしょう。
特に訪問介護は利用者の方と1対1で接することが多くなるため、知識や技術を身につけることも大切ですが、相手に合わせて適切なコミュニケーションを取れるような方が利用者の方と良好な関係を築くことができ、結果的に長続きする傾向があります。
また、1日に1人で複数件を訪問することになるため、体力や責任感も求められます。そのような方も訪問介護に向いているでしょう。
訪問介護の給料相場
最後に訪問介護の給料相場をご紹介します。厚生労働省が発表した「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、2021年の訪問介護の平均給与額は、常勤の場合で31万4,590円、非常勤の場合で20万1,120円となっていました。
ただし、この調査で記載されている平均給与は、基本給に各種手当や一時金(賞与)を含めた金額となっています。手取り額は保険料や税金などを差し引かれて、額面給与の7.5~8.5割程度になるといわれているため、この点も踏まえて参考にするようにしましょう。
訪問介護の仕事内容を理解してチャレンジしてみよう
訪問介護は、常勤のほかにも登録や派遣型など様々な働き方があり、子育てと両立しながら働きやすい職種として人気を集めています。また、働く場所も個人宅や住宅型老人ホームなどさまざまです。自分に合った働き方を見つけることができれば、プライベートと上手に両立しながら、長く活躍することができるでしょう。
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