処遇改善手当とは?制度の概要や算定要件、支給されるまでの流れを解説

 

介護処遇改善手当は、介護職員の賃金改善を目的に設けられた制度です。介護業界は長年にわたり人手不足の状態が続いており、離職率の高さや定着率の低さも課題となっています。

介護処遇改善手当には、これらの問題を解決して介護職員に少しでも長く仕事を続けてもらうといった狙いがあります。

この記事では、介護処遇手当の概要や算定要件、支給されるまでの流れ、もらえない時の対処法などについて解説します。

介護処遇改善手当とは

介護処遇改善手当とは、介護サービスの利用料に処遇改善加算を上乗せして利用者に請求し、発生した利益を事業所に勤務する介護職員に分配するというものです。

介護職員の方がこの介護処遇改善手当を受け取るためには、所属している事業所が処遇改善加算を取得している必要があります

処遇改善加算とは、区分ごとに設定された要件を満たした事業所で働く介護職員の賃金改善を行うための加算で、下図のように5つの加算区分に分けられています。

出典:厚生労働省 「介護職員処遇改善加算」のご案内

事業所が介護職員処遇改善加算を取得するためには、3つのキャリアパス要件と職場環境等要件の算定要件を満たしていることが必要で、事前に自治体へ計画書と報告書を提出しておかなければなりません。

処遇改善加算の算定要件

キャリアパス要件1

①職位②職責又は職務内容に応じた③任用要件を定め、④賃金体系を整備する。

上記について、就業規則等に基づいた明確な根拠規程を書面に記し、全ての介護職員に周知する。

①職位 介護士長、フロアリーダー、主任、上級ヘルパー、中級ヘルパー、初級ヘルパー等、介護職員として2段階以上の職位を定める。指定基準上当然配置する職種(管理者、サービス提供責任者、生活相談員、計画作成担当者など)のみの定めでは不可。職位の名称は法人独自のものでOK。
②職責又は職務内容 ①で定めた2段階以上の職位間における職責や職務内容の違いを定める。
(例)上級ヘルパーの職責は「困難事例に対応する」「初級ヘルパーを指導する」等
③任用要件 上級ヘルパー、主任等定めた上位の職位になるためにはどうしたらよいかを定める
(例)「サービス提供〇〇時間以上」「介護福祉士有資格者」「当法人が実施する昇任試験に合格する」等
④賃金体系 職位に応じて給与表を分ける、あるいは上位職位に〇〇手当を付ける等、上位職位の職員を賃金で評価し、各職位に対応する賃金を明示する。

キャリアパス要件2

資質向上のための目標を定め、その実現のための取り組みとして、次のいずれかを実施する。

研修の機会の提供等 研修計画を定め、研修機会の提供又は技術指導等を実施するとともに、職員の能力評価を行う。また、定めた研修計画書を提出する。
資格取得の支援 資格取得のための支援を実施する(介護職員処遇改善計画書の該当欄に実施する支援の内容を具体的に記載)
(例)
「資格取得のための費用の助成」や「シフトの調整」等

キャリアパス要件3

経験若しくは資格などに応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設ける。昇給の仕組みの例は以下の1~3を参考にする。

  1. 「勤続年数」や「経験年数」等に応じて昇給する仕組み
  2. 「介護福祉士」や「実務者研修修了者」等の取得に応じて昇給する仕組み
  3. 「実技試験」や「人事評価」等の結果に基づき昇給する仕組み

※上記仕組みにおいて、人数制限を設けないこと

出典:介護職員処遇改善加算にかかるキャリアパス要件の審査基準について 

職場環境等要件

職場環境等要件として、研修の実施などキャリアアップに向けた取組、ICTの活用など生産性向上の取組等の実施を求めている。以下のうちから1つ以上取り組んでいる必要がある。

区分  具体的な内容
入職促進に向けた取組 ・法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化
・事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築
・他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築
・職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 ・働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等
・研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
・エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入
・上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ等に関する定期的な相談の機会の確保
両立支援・多様な働き方の推進 ・子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備
・職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備
・有給休暇が取得しやすい環境の整備
・業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実
腰痛を含む心身の健康管理 ・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、介護ロボットやリフト等の介護機器等導入及び研修等による腰痛対策
の実施
・短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施
・雇用管理改善のための管理者に対する研修等の実施
・事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備
生産性向上のための業務改善の取組 ・タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットやセンサー等の導入による業務量の縮減
・高齢者の活躍(居室やフロア等の掃除、食事の配膳・下膳などのほか、経理や労務、広報なども含めた介護業務以外の業務の提
供)等による役割分担の明確化
・5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備
・業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減
やりがい・働きがいの醸成 ・ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善
・地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施
・利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供・ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供

出典:処遇改善に関する加算の職場環境等要件

処遇改善手当が支給されるまでの流れ

処遇改善手当が介護職員に振り込まれるまでの流れは以下の通りです。

  1. 事業所・施設が取得要件をクリアするための計画を作る
  2. 計画を実行して、都道府県や市区町村に報告する
  3. 各自治体が事業所・施設に処遇改善加算を支給する
  4. 事業所・施設に支給されたお金が介護職員へ配られる

上記を見ても分かるとおり、処遇改善手当を受け取るためには、まずは事業所や施設に行動を起こしてもらう必要があります。また、取得要件に対して事業所や施設がどれくらいしっかりと取り組んでいるかによって、振り込まれる金額も変わってきます。

あくまでも事業所や施設主導で進めるものであり、介護職員単体の行動によって受け取れるものではないことを理解しておきましょう。

処遇改善手当がもらえない時の対処法

処遇改善手当がもらえない時は、以下のような理由が考えられます。

  • 事業所や施設に振り込まれる加算がそもそも少ない
  • 分配方法が不透明な状態になっている
  • 税金や社会保険料が増え、手取り額がほぼ変わっていない

事業所や施設に振り込まれる加算がそもそも少ないといったケースに当てはまりそうな場合は、国が運営するサイトから事業所や施設に振り込みが行われているかを確認することが可能です。

分配方法が不透明な場合は、直接上司に確認してみましょう。そもそも、処遇改善手当は介護職員の処遇を改善するため支給されるお金であり、使い方が不透明な場合は処遇を改善しているとは言えません。

また、実は振り込まれているけれど、税金や社会保険料額が増えた結果、手取り額はそこまで変わらなかったというケースもあり得ます。この場合は、給与明細に処遇改善加算と書かれている欄があるかどうかを確認してみましょう。

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